心(いのち)の特効薬

我が子の自死に遭った直後は、たとえるなら頭を金属バッドでおもいきり殴られて脳震盪を起こしたような感じでした。

それでもボーッとしているわけにもいかず死亡に纏わる様々な手続き、葬儀を執り行い、それらを奇妙なハイテンションでこなしていました。


微妙な興奮状態の反動か、夜はぐったりしていても眠りは浅く、“起きてしまった事”を心に突き付けられて苦しくなってくると、深呼吸代わりに小さく唸り続け、呼吸を整えながら朝まで震えて横たわっていたものです。


しかし日が経つと、今度は次第に意識(気持ち)がはっきりしていく中で、心に受けた“痛み”と“傷み”をじわじわと体感させられる、人生で経験したことのない精神的苦痛が待っていました。


 ――この先、この状態で私は生きていけるのか?


この苦しみを無にするには、自分自身を消してしまえばいいのだと、後追い自死を考える日もありました。

が、その時は『亡き子と同じところへ逝くのだ!』という切なる願いではなく、どうにもできない苦しみから逃れたいだけだったようにも思います。

(あの子もそうだったのかなぁ………)


けれど、これまでの人生で私の辞書には自死(自殺)なんて無い事だったので、頭で思い立っても実際に行動に移すところまでいくには、あまりにも隔たりがあることも分かりました。



 ――突発的には死ねない。


心臓をえぐられるような目に遭っても、まだ『死に逝くこと』は私にとって距離を感じるものでした。



 ――生き地獄で苦しみながら心を蝕まれていくのか。


シェイクスピアの悲劇『リア王』では、娘の遺体を腕に抱きながら嘆き悲しみ絶叫して世を去る場面がクライマックスになっていますが、文学の中だけでなく実際に地震や津波などの大災害の際、傷心が元で急性心筋梗塞に似た症状が多発して落命する人もあることがわが国から報告されていたり、伴侶の死の直後に心臓発作を起こすリスクが21倍にも達するという知見が米国から出ているらしいのです。


いずれも悲嘆に暮れた心の傷が引き起こした体調不良からの死ですが、近しい者の死別から精神そのものを病み、悲しみの泥沼に沈み逝く人も多いでしょう。

ましてや大切な人の死因が自死であれば、引き摺られて後追い自死するリスクは高いと考えますし、現に自死遺族は『ハイリスク者』と呼ばれているらしいですね。

わからないでもないのですが、それにしてもネガティブな呼び方です………(^_^;)。


米国では『サバイバー』と呼ぶそうですが、自分の場合はこっちのほうがしっくりくる感じがします。


サバイバーの生きづらさ、苦しみ悲しみ(怒り、自責)の起因は、どんな背景があったとしても、最終的に愛すべき人が決断決行した行動によるもの。

生き物のあたりまえに『生きよう』とする本能に逆らう惨事を目の当たりにしたわけなので、そりゃしんどいです。

その上で自身が生きていくとなれば、自分の人生を全うするまで負荷がかかることになります。



………と、今現在、このブログを書いている最中も、新型コロナのニュースが横からひっきりなしに流れてきていますが、ワクチン開発への研究もかつてないスピードで進められているようですよね。

それを聞きながら、ふと思いました。

サバイバーの悲嘆、苦痛、不快感、虚無感、はたまた絶望感に効く特効薬やワクチンは無いんだよなぁと。


そう、心(いのち)の特効薬などありません。


悲しいけれど、現実に死に逝く人もいます。

悲しいけれど、生き延びている人たちもいます。


この場合の後者、先人サバイバーの智慧に、早いうちに出会うことができた私は心(いのち)拾いしました。


悲嘆からくる心の苦痛は病気ではない


薬で治せるものでも、消し去るものでもない


悲しみは=愛なのだから

etc.………


とても大きくて深い脅威的な悲しみを前に、呆然としている私の心を擦るように、『立ち向かっていく』のではなく『向き合い方、考え方』を説いてくれたのが、田中幸子さんという自死遺族のブログに込められた言葉たちでした。

(事後初めて参加した最寄りの自助グループわかちあいの会で、当時のスタッフの方がおしえてくださったHP)。

★田中幸子のひとりごと~自死で子供を~(ブログ)


ウェブ上の検索エンジンにヒットして知った方も多いのではないでしょうか。

日本で初めて自死遺族の自助グループを立ち上げた方ですね。


私の人生最大のピンチで、踏ん張る心の健康を保てていけてるのは、病院の処方薬ではなく、先人の智慧が詰め込まれたブログだったのです。


そうして生き延びて、去年から始めてみたAmebaでも、心の保健に繋がる気づきを貰える、たくさんのブログとの出会いは続いています。

同時刻に同場所に集うわけではないけれど、Web上での間接的なわかちあいみたいにも思え、大切な場の一つになっています。


📷突然ですが、現在うちのお笑い担当ニャンズの一匹、盆(ぼん♀)ちゃんをチラ見せ。

断捨離した亡き子の寂しい部屋でも、このポーズで昼寝爆睡された日ニャぁ心がいくらか穏やかになります(;^ω^)……。

※“昼寝”と“笑い”は体の免疫力を高めるそうですので、もし新型コロナに感染発症しても負けないニャ?

(画像加工/きんとぎん)


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