暗闇を照らす灯り

普段生活している上で極めて近しい者の自死(自殺)は、理由はどうあれ、その行為自体がとてつもない破壊力を持って周囲の人たちに影響を及ぼすことは確かです。

我が子が先立った直後、涙を拭うことも忘れ、半ば放心状態の夫が声をしゃくり上げながら言い放った言葉が忘れられません。


これまで築いてきたものを〇〇ちゃんが全て壊した……」


本当に、本当にそうだと思いました。

その衝撃たるや、大動脈をいきなり切り付けられたショック状態に近いものであり、また『築いてきたもの』とは家屋や財産などではなく、『これまでの人生で培ってきた』目に見える物以外のことであり、それらが何もかも破壊され、木っ端微塵になってしまいました。


遺書には『天?地?から見守っています』という……なんとも表現しづらい……残酷さを併せ持つ優しげな一文も書かれてありましたが、『自死』という事実は大きな岩のように目の前を塞ぎ、私自身の人生そのものが否定されてしまったと感じました。


自死者は、自分の大切な人たちを傷つける気持ちなどさらさら無い場合が殆どなのだと思います。

が、結果として一番近しい者たちが一番酷い打撃を受けてしまうのですね。

そしてそれは遺族間の絆にも深刻な影響を及ぼしてしまうこともあるでしょう。


うちは……、

先に述べた夫の言葉通り、ほぼ粉々に砕かれました。


どこにでもあるような、普通の中の普通といった家庭だったと思います。

適当に和気藹々としていて、賑やかでおしゃべり好きな明るい家族、これといった贅沢はしなくともそれなりに楽しく暮らしている『つもり』だったのが……こんな想定外の事態に陥り、砕かれてしまいました。


先立った子をとてもかわいがっていた、比較的穏やかな性格の長女(お姉ちゃん)からも、事後まだ日が浅い頃には攻撃的な言葉を浴びせられました。


私がこの家に居る理由は、〇〇ちゃんが居たから。〇〇ちゃんが私の心を占める割合が家族の中で一番大きい。私がこの家に帰ってくる楽しみはそれだけ」と、最愛の妹を喪したショックからか、その悔しさと寂しさ、もうこの家には帰りたくない(帰る理由もない)という投げやりな言葉を、私へ向けてきたのです。


そんなことはわかってる。あなたが〇〇ちゃんを可愛がっていたことは私が一番よくわかってる」と返答するのがやっとでした。


親子でもギクシャクしだして、ほんの些細なことでも険悪なムードになったり、方向違いの過剰反応で家族間がピリピリとして、夫ともまるで噛み合わなくなり、お互いがお互いを目視もできない状態とでもいいましょうか、どれほど各々が酷いショック状態であるのかがわかり過ぎて、正面から向き合えないのです。

お互いの傷の状態が見え過ぎて悲惨な故、直視が耐えられない上に、粉々になった心の破片でまた転んで無駄に傷つくといった救いようのなさ(^_^;)……。

それでもなんとか大きな傷口を止血するなり応急処置を施すなりして自分を救わないと立ち上がることもできませんし、相手のために動くこともできません。


しかし、そんなギリギリの精神状態でしたが、肺の手術後三カ月めから始めたウォーキングトレーニングでなんとかメンタルの具合を保ち続け、事後6~7カ月経った頃でしょうか。

夫のすすめもあり、初めて『自死遺族のわかちあいの会』にリアで参加してみました。


夫は、外では気丈にふるまっていたのだと思いますし、できる範囲で家族のことを思いやってくれてはいたものの、本当は自分自身の心のケアだけでいっぱいいっぱいだったのだと思います。

私自身もそうでしたし、それがよくわかるだけに(^_^;)辛い……頼るのは無理だと。

それと、たまたまのご縁ですが、夫の職場の同僚の一人が自死遺族だったこともあり、ウェブ上にもわかちあえる場所があることや、リアでのわかちあいという会もあることを教えてくださったので、あとは自分で検索をかけて自分で選んだ場所に、術後の回復具合をみて出向いてみました。


支離滅裂に口から飛び出す悲嘆の破片を、一緒に手にとって寄り添ってくださる方々に出会えたのは、個人的には本当に有り難いことでしたし、以降自分ペースで定期的に参加し、交流することでとても助けられてきました。


一日の中で、気持ちの浮き沈みが非常に激しかった時期にも、決してひとりではないんだと、悲しい時間が襲ってくる時には、会で出会った皆の顔を思い出して深呼吸(;^_^A。

先の見えない暗闇の中、足元を照らしてくれる小さな灯の一つになっていったようにも思います。


写真は、先日府中で開催していた『雨宿り~わかちあいの会』で特別企画としてアートワークを取り入れたイベントに参加した時に捏ねた『手のり地蔵』です(^^)。

特殊な粘土は乾くのに一週間ほど要するということなので、まだ完成していない状態のものですね。

九月は先立った子の誕生日もあるので、完成させたらプレゼントとして、小さなお仏壇に供えようかなと思っています(^^)。

星のしずく*管理人


自死遺族 家族友人サポート にほんブログ村(自死遺族)

さいたま自死遺族の集い*星のしずく

大切な人に自死で先立たれ 深い悲しみの中におられる方へ * 『星のしずく』は埼玉県さいたま市で、自死遺族当事者だけで運営している自助グループ*コミュニティです。 【お問合せ hoshinoshizuku0922@gmail.com】

0コメント

  • 1000 / 1000