青空の修復

久しぶりに六本木ヒルズに向かいました。



およそ2年前、乳がんステージ2の告知を受けた私が、手術を直前に気持ちが大きく動いて向かった街。


有ちゃんが還ってゆく約一ヵ月前の2016年12月に、母娘、親子二人きりでクリスマスイルミネーションの撮影デートをした、キラキラが詰まった思い出の場所。

(乳がん罹患でもなければ、いまだに地雷の場所であり、二度と足を踏み入れられなかったと思います)


あのときは偶然、ヒルズの森アーツセンターギャラリーで大好きだった『ベルサイユのばら』展が開催中。

お空の有ちゃんや母が、私を不憫に思って、少しでも気を紛らわせる楽しみをプレゼントしてくれたかのように感じたものでした。



今回は森美術館。


目的は、ご存じの方も多いかと思いますが、ルイーズ・ブルジョワ展:『地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ』(長っ…)という個展鑑賞のためです。


親しくしている族ママさんからのメールに添付されていたポスター画像に惹かれたのが本音。

(このママさんのお空の子🕷サブシンボルでもあったりして(^◇^)/ 個展の長いタイトルと共に、とてもそそられたのです)





六本木の街のシンボルとも言える、この巨大蜘蛛のブロンズ像がルイーズ・ブルジョワさんの代表作の一つですけれど、作品の背景にあった作者の想いだとか作意を、私は全く存じあげておりませんでしたし、調べようともしませんでした(^_^;)。


「迫力あるけど、なにこれ📷」と、パシャパシャしていたものですが………





この大きな作品は『ママン(おかあさん)』と名付けられた、文字通り作者のおかあさんをテーマに作られたものだったのですね………!




なぜに蜘蛛?



ということで、けっこう撮影許可作品が多く、拡散オッケーモードでしたので、ブログ上でレポートしてみようかと('◇')ゞ 🔺画像多し





◆作品群、第1章は『私を見捨てないで』


ガイドにもありますが、作者は一生を通じて、見捨てられることへの恐怖に苦しんでいたようです。


(実父の不貞行為の目撃←お相手は家庭教師の女性。また、出張の多かった父と家族の関係から、母親との信頼関係は絶大でありましたが、比較的早い死別に遭い、孤独と不安で精神を病みました)




母と子の関係こそが、将来のあらゆる関係の雛形になるという確信に至ったことが伝わってくる作品たち。




📷作品『私の青空』




中には、人体の断片を模ったものが度々登場し、不安定な精神状態や崩壊が表現されている作品もあります。






◆作品群、第2章は『地獄から帰ってきたところ』


解説で興味深いのが、作者は彫刻を創作することを一種のエクソシズム(悪魔祓い)だと信じていたようで、作品を創ることが感情のはけ口になっていたことです。


そういえば私も、お絵描きをすると、こころの中が浄化されます。

心地よい疲れも伴い、スッキリしてくるというか。




ブルジョワは、精神分析を通じて、自らの作品の多くが父親に対する否定的な感情から生まれたということが解りました。




📷インスタレーション作品『父の破壊』では、横柄で支配的な父親の像を食すことで復讐を果たすという幻想を表現。







◆作品群、第3章は『青空の修復』


ブルジョワは自らを(精神にダメージを受けた)“サバイバー”であるとし、打ち込んできた自身の芸術が松葉杖や義肢のように機能してきたことで、様々な苦難を克服できたと信じていました。


最終章の作品たちは、1990年代後半から制作を始めたという、大切な思い出の品々を用いて作り出したものたちが展示されていました。





タペストリーの修復業を営んでいた母親の仕事を思い起こし、子供の頃の思い出を遺す手段でもあったようです。




📷作品『青空の修復』


青色は作者にとって自由と解放を意味し、青い糸で縫い付けられ、修理された5つの空洞は、ブルジョワが生まれた家庭(両親と3人の子ども)と、NYで築いた家庭(妻、夫、3人の息子)を表わしています。



📷作品『地獄から帰ってきたところ』


大切な人々との死別、途方もなく続いた鬱病、自己否定、孤独の感情等、たび重なる逆境を生き抜いて、昇華されてきた軌跡がブルジョワ作品。


地獄を「素晴らしかったわ」とするブラックユーモアを交えたこの言葉(刺繍)を、私は穴があくほど見つめてしまいました。




ブルジョワにとっておかあさんは大きな蜘蛛のような存在だったのですね。


「クモは巣をこわされても怒らない。もういちど、糸をはき、なおすだけ」


ママンに習い、98歳で天寿をまっとうするまで、彼女は創作を続けたようです。



とても悲しいことにうちは逆縁ではありますが、今回の個展で“母と娘”が紡いできた軌跡を見せていただいて、自分が生ききった先で我が子に再会できたときには、訊いてみたいこと(楽しみ)が一つ増えました。


絵本『ルイーズ・ブルジョワ~糸とクモの彫刻家』より

絵/エイミー・ノヴェスキー

文/イザベル・アルスノー

訳/河野万里子




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