陰影

娘を自死で喪ってからは、毎年恒例のお盆帰省中にプチ同窓会をしていた故郷の旧友たちとは会わなくなりました。

(まる3年は会ってない)


もちろん気持ちが向かないのもありますが、ここ数年実両親の体調が芳しくなかったこともあり、帰省中くらいは介護に注力しよう!と、飲み会などに割く時間を作らなかったのも理由です。


しかしつい先日、特に長い付き合いだった旧女友だちから、新コロ感染症拡大のことで、私の健康状態や家族を心配するメールが久々にありました。

旧友たちにも亡き娘については喪中葉書こそ出しましたが、事の詳細については話していません。


私が左肺の全摘除手術をうけたのは亡き娘の四十九日を終えてから。

その時にもこの旧友は、地元神社のお守りや入院グッズを詰め込んだお見舞いを送ってくれたりと、なにかとマメで気遣いのある、そつの無いタイプの人間。

そんな旧友にさえ私がすぐにメール返信できなかったのは、今年の年賀状も貰いっぱなしで『不義理をお許しください』的な気まずさもあったからです(^_^;)。



さて、どのように世間話を展開し、返信したらよいのか。


とりあえず自分の体調には今のところ問題が無いこと、社交辞令の挨拶文と、今年一月に実母が他界したことを書き込み、返信しました。

すると、彼女自身の近況報告、旦那さんや彼女の一人息子さんのことを堰を切ったように返信してきました。



 ――そっか。むこうは色々とお話ししたかったのだなぁ。でも、私は。



近況報告をしたいわけでもなかったことに気づいて、途端に気持ちが冷めました。

以前の私なら、相手が黙るまで(^_^;)世間話やらを返信しまくるタイプだったんですけどね。


事後暫くしてから勤め出した職場の先輩さんたちには、亡き娘の事をたくさん話してるんですけど、旧友にはどうにも話したくないみたいです。

なぜなんでしょう(汗)。



その後、続けてメールがきたので開けてみると………



 ごめんね、途中で送信してしまいました。

 お母さん、お悔やみ申し上げます。

 なんか、信じられないな。

――中略――

 とにかく、このコロナ、

 早く終息してほしいです。

――中略――

 ○○も、何事もありませんように。

 元気でいてくださいね。



 ――信じられない?かぁ… 亡き娘の時には、そんなメールも無かったよなぁ。言葉を失くすほどの事に思ったんだろうなぁ。

(ちなみにこの旧友も実父の方は既に他界)


 ――元気か?…元気…元の気………ありえないなぁ。



心配してくれる旧友には申し訳ないけれど、無期限でこの『不義理状態』は続きそうです。

『彼女がいう元気』には、私は一生ならないと思うし、無理してテンションを合わせることもないのかな、と。



随分と陰影のメリハリがはっきりとした人生を描くことになってしまいました(?)。

………と、絵にたとえると陰影深いのは魅力的になる場合もあるでしょうけど、人としてはどうなんでしょうね(^_^;)。

別人とまでは言わないけれど、随分私も変わってしまったことに気づかされました。


📷『階段前の風景』

亡き娘が(先立つ)中2で描いた水彩画(郷土を描く美術展入選)です(^^)。

中学校の正面玄関入り口にも飾ってくださいました。



子供の絵には影が無いといいます。

成長と共に陰影も意識して描けるようになってゆく。

(逆に作風として意識して省くこともできるようになったり←有名画家作品にもありますね)


この新緑の水彩画には、これまでの作品にはあまり見られなかった陰影が、淡いながらも少しずつ備わってきていたところで、絵画好きの私は頼もしく我が子の成長ぶりを見ていたのですが、タイトル通り階段前の風景で止まり、その先を飛ばして他界して仕舞いました。


私には『遺作』というより『遺影』にも感じる絵なのです。


更に年齢を重ねて陰影を描き込み、どんな大人になっていくのか見てみたかったなぁ。


淡い新緑のまま、額縁に納められたこの世でのもう一つの、壁に飾られた遺影を眺め、子供のまんまの亡き娘を偲ぶ、5月5日こどもの日です。

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